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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)2822号 決定 1957年12月17日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人高城正雄の弁護人三原道也、同水谷金五郎の上告趣意は、単なる法令違反および事実誤認の主張であり(水谷弁護人の所論中には憲法一四条違反をいう点もあるが、その実質は前記の主張をでない)、被告人吉野正勝の弁護人和智昂、同和智竜一、同武井正雄の上告趣意は、判例違反をいう点もあるが結局は単なる法令違反および事実誤認の主張と、量刑の非難とに帰し、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。論旨は要するに、原判決は西日本鉄道および日本国有鉄道の運転取扱心得ならびに刑法二一一条の解釈適用を誤り、被告人らに不当な注意義務を認めたものであるというにほかならない。しかし、駅長その他の鉄道従業員は、単に列車の運転取扱に関する特別の規定を守るだけでその義務を常につくしたものということはできず、いやしくも列車の運転に関して危険の発生を防止するに可能なかぎり一切の注意義務をつくさなければならないのであるから(昭和九年(れ)五三三号同年六月二二日大審院判決、刑集一三巻一一号八六三頁参照)、原判決が証拠によって認められる本件列車衝突事故発生のいきさつとして、くわしく判示した状況のもとにおいては、被告人らに刑法二一一条の業務上必要な注意を怠った過失があったものと認めた原審の判断は正当である。その他記録を調べても、刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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